メガベンチャー・SmartHRが組織の成長痛を乗り越えるために──経営と現場を一本につなぐミドルマネジメント改革

  • 301名以上
smarthr@3x

株式会社SmartHR
取締役CFO(最高財務責任者)
森 雄志さん

日本を代表するSaaS企業として、圧倒的なスピードで成長を続ける株式会社SmartHR。「2030年に売上1,000億円」という高い目標の達成に向けて組織開発をリードしているのが、同社CFOの森雄志さんです。

従業員数が1,500(2026年1月時点)を超え、事業の多角化が進む中、同社では経営方針を現場に浸透させ、実行につなげることが以前より難しくなっていました。トップの意思をいかに現場に「翻訳」しながら落とし込み、実行につなげるのか。

その鍵を握るミドルマネジメント層の強化を目指し、「EVeMマネジメントパートナー」を導入しました。

2025年9月、全社展開を見据え、まずは森さんが管掌するコーポレート部門のマネージャー以上を対象に導入しました。全参加者がプログラム内容を高く評価し、マネジメント行動にポジティブな変化が見られています。急成長企業が直面する組織の痛みにどう向き合い、さらなる成長に向けた武器をどう手に入れたのか、森さんへお話を伺いました。 

経営と現場の「橋」が途切れかかっていた

 ――「EVeMマネジメントパートナー」導入前の課題について教えてください。なぜ、このタイミングでミドルマネジメント改革が必要だと考えたのでしょうか。

森さん(以下、敬称略):当社は中期的な計画として「2030年に売上高1,000億円」という高い目標を掲げています。この山を登り切るためには、これまでの成長速度の延長線上では間に合いません。もっとスピード感をもって組織をアップデートしていく必要があると考えたのが、今回の取り組みの原点です。

特に課題感があったのは、組織の「翻訳」機能の限界です。従業員が1,000人を超えてきたあたりから、経営方針を現場の執行にスムーズに落とし込むことが難しくなっていました。

以前は半期に一度のキックオフで経営からメッセージを伝えると、ミドルマネジメント層がそれを咀嚼し、各部署の目標に反映していました。しかし、従業員数が増え、組織の階層が深くなるにつれて、経営方針の背景にある「Why(なぜやるのか)」がどこかで削ぎ落とされ、各部署に届く頃には、経営の方向性と現場の動きにズレが生じていたのです。私自身も、現場部署と対話すると、経営が発した情報が意図通りに伝わっていない場面に出くわすことが増えていたんです。情報の橋渡しがどこかで止まってしまっている。「これは何らかの手を打たなければならない」と感じていました。

事業の多角化も、マネジメントを難しくしていました。数年前までは労務管理という単一ドメインに集中していましたが、現在はタレントマネジメントなどにも事業領域が広がり、さらには日々進化していく生成AIへの対応も生じています。事業も競争環境も複雑化し、背後にあるコンテキストも複雑さを増している。となると、経営からのメッセージを翻訳する難易度も上がります。その結果、経営方針の意図や背景をどこまでかみ砕き、現場が納得感をもって動ける形にまで落とし込めるかに、マネージャーごとの差が生じていました。

 260413-ev-062

「従業員数の増加により、経営の方向性と現場の動きにズレが生じていた」と話す森さん

 ――急成長する組織では、期待を込めて管理職に抜擢する場面も増えると思います。その点に難しさはありましたか。 

森:急拡大する組織においては、マネジメントの適性を見極める前に、期待を込めて管理職に抜擢せざるを得ないケースもあります。これは事業成長とのトレードオフとして受け入れているリスクですが、そのリスクをカバーするための「武器」や「型」を、会社として体系的に提供できていなかったことも課題でした。

成長企業特有の痛みに寄り添う、唯一無二のパートナー

――数あるマネジメント研修サービスの中で、なぜ「EVeMマネジメントパートナー」を選んだのでしょうか? 

森:一言で表すと、「成長企業ならではの痒いところに手が届く」ソリューションだったからです。世の中には、大企業の組織運営ノウハウや、数名規模のスタートアップ向けノウハウは多くあります。しかし、数百人から数千人へと一気に駆け上がろうとするフェーズ特有の、泥臭くて生々しい困りごとに応えてくれるものは驚くほど少なかったんです。   

 当社が抱える悩みに対し、解決の道筋を示してくれたのがEVeMでした。組織の安定と事業成長のトレードオフをどうコントロールするかといった判断の勘所も、明確に提示してくれます。このプログラムなら自分たちの実務に直結する学びが得られると思い、導入を決めました。

260413-ev-307

――今回はまず、森さんが管掌するコーポレート部門から導入されました。

森:私自身を含め、マネージャー以上の14名が受講しました。マネージャー自身のコミットメントも必要なプログラムなので、全社展開する前に特定部門でパイロット実施し、投資対効果を見極めたいという意図があったのです。社内調整に時間をかけるより、まずは早く成功事例を作りたいと考え、開催しました。 

マネジメントを共通言語化する効用

――「EVeMマネジメントパートナー」を受講して、印象に残っていることを教えてください。

森:最もインパクトがあったと感じているのは、マネジメントが機能している状態を「執行・活用・伸張・連携」の4つの観点で捉えられるようになったことです。何となく良い・悪いで語るのではなく、自分たちのマネジメントが今どの状態にあるのかを共通の基準で見られるようになりました。その結果、何ができていて、どこに改善の余地があるのかを具体的に話せるようになったと思います。

これによって、私とマネージャー陣との会話が大きく変わりました。「今は採用や育成をして組織能力を上げたほうがいいのではないか(伸張)」、あるいは「隣の部署とのコミュニケーションを強化してほしい(連携)」といったように、共通の基準をもって具体的かつ建設的なコミュニケーションができるようになっています。

險倅コ・_08 (1)

 ――その他の点で、新たな気づきや学びはありましたか?受講した方からの感想もお聞かせください。  

森:一人ひとりが、自分のマネジメントスタイルに対する自己認識が深まりましたし、お互いを理解することにもつながっています。「執行」に注力しがちなマネージャーもいれば、育成を中心とした「伸張」に多くの時間を割くマネージャーもいる。いずれも、本人の無意識の癖なんですよね。これを「執行・活用・伸張・連携」という同じ尺度で振り返ることで、個々人の強みや改善点が可視化できました。この気づきは、自らを成長させるうえでも、私がマネージャー陣を育成するうえでも役立っています。

他の受講者からは、EVeMのトレーナーと隔週で1on1セッションを行い、自分の仕事を棚卸しできる環境がありがたかったという感想があがっています。マネージャーは、仕事の相談を身近な人にしにくく、孤独になりがちです。だからこそ、社外の第三者であるトレーナーは、心強い存在になっていたと思います。

260413-ev-224

 森さんは「マネージャー陣が共通言語で話せるようになったことで、相互理解が進んだ」と言う。 

未来から逆算して組織を設計できるように

 ――マネージャーの皆さんに、具体的な行動変容は見られていますか? 

森:目標設定の仕方が変わりました。コーポレート部門の目標は、「◯◯を実施する」といった「To Doリスト」になりがちです。しかし、それでは経営へのインパクトが見えにくい。今回の受講を通じて、「To Do」ではなく「To Be(どういう状態にしたいか)」で目標を設定する意識づけができました。「何が完了していることを目指すのか」を明確にすると、目標達成が会社の成長にどう寄与するのかがクリアになります。

最近では、既存のリソースの足し算で実現できることを目標にするのではなく、未来から逆算して自部署のミッションと目標を考える議論が増えました。その達成に向けて必要な人材についても、内部からの登用だけでなく外部採用も含めてフラットに検討できるようになっています。

また、ミドルマネジメント層は経営方針が下りてくるのを待つ傾向がありましたが、今は自ら「今の経営状況を鑑みて、自部署は何をすべきか」を考えるために必要な情報を取りに行く姿勢が強くなっています。経営と現場、双方向に情報を環流させるための行動が見られているのです。

このように行動が変わると、課題認識のスピードも上がります。以前は発生した課題をどう解決するかにばかり時間を使っていましたが、これから起こりうる課題、すなわちリスクへの対応にも着手できるようになってきました。

260413-ev-014
SmartHRでは、経営層とミドルマネージャー層の間で、情報の環流が進んでいる。 

守破離の「守」を徹底することで、組織を強くする

――今後の展望をお聞かせください。

森:「EVeMマネジメントパートナー」は、今夏から他部門にも展開予定です。管掌人数の多いマネージャーから優先して受講してもらい、組織全体への波及効果を最大化したいと考えています。

マネジメントのスタイルは、自分が過去に受けてきたマネジメントに強く影響されます。正しい「型」に基づいたマネジメントが社内に浸透すれば、それが自然と次の世代の育成にも繋がっていきます。この「正の循環を生み出すためのインフラ」として、EVeMのメソッドを活用していきたいですね。

260413-ev-129

正しい『型』に基づいたマネジメントが社内に浸透すれば、それが自然と次の世代の育成にも繋がっていく」と森さんは考えている。 

――森さんが管掌するコーポレート部門の組織開発においては、どのようなチャレンジをしていきたいと考えていますか?

森:私が目指しているのは、事業の進捗に対して「0.5歩先」を走る組織です。1年後に起きる課題を予見し、先回りして組織づくりや人材採用、制度設計に手を打っておく。1歩先だと早すぎて仕組みが機能しにくくなりますし、後ろを走っていては事業の足を引っ張ってしまう。この「0.5歩」の塩梅が重要です。

「2030年に売上1,000億円」というゴールから逆算し、今何を仕込むべきか。今まで問題になっていなかったことでも、高い目標を見据えると課題になることも多くあるでしょう。こうして課題認識のスピードが上がると、意思決定のスピードも劇的に向上すると考えています。

260413-ev-272

――最後に、同じ悩みを抱える他社へのメッセージをお願いします。

森:マネジメント改革をする際、自社独自のあり方を模索することはよくあるのではないでしょうか。ですが、まずは世の中にある確立された「型」を徹底的にインストールすることから始めるべきだと思うのです。「守破離」でいえば、徹底的に「守」を浸透させることが大切だと考えています。

人のマネジメントには長い歴史があり、信頼性の高い「型」が既に存在します。それを再発明することに時間を使うよりも、確立された「型」という武器をマネージャーに渡し、情報の目詰まりを解消する。それが結果として、組織の自走度を高める最短ルートになります。

また、これからのAI時代、マネージャーが管理できる人数(スパンオブコントロール)は広がっていくでしょう。そうした時代だからこそ、マネジメントスキルは管理職層だけでなく、メンバー層も含めた共通言語にするべきだとも考えています。

SmartHRはこれからも、この「型」を武器に、誰もがマネジメントという技術を使いこなし、「2030年に売上1,000億円」という未踏の目標に向かって加速し続けていきたいと思います。  

260413-ev-252