「どちらもあきらめたくない」女性たちが変化を前向きに楽しめる社会へ
JR東日本発のワーキングマザーキャリア形成支援サービスが目指すもの【マネ型ワークショップ編】
東日本旅客鉄道株式会社
PeerCross事務局 堀元 由梨さん
はじめに
「出産・育児をしながらも、キャリア形成にも前向きな"フルキャリ"の価値観を持つ女性が、変化を前向きに楽しめる社会にしたい」——そんな想いから生まれたのが、東日本旅客鉄道株式会社の社内ベンチャープログラムを通じて事業化された「PeerCross(ピアクロス)」です。
2023年7月にサービスを開始し、現在では約40社の企業に導入されています。「バリキャリ」でも「ゆるキャリ」でもない、ライフもキャリアも両立させたいと願う女性たちのネットワーキングを通じたキャリア形成支援サービスとして注目を集めています。EVeMでは、女性管理職とその育成を支援しており、PeerCrossの取り組みに共鳴。座談会ではEVeMトレーナーが講師として登壇し、キャリアやマネジメントに関する実践的な知見を共有しました。
今回は、PeerCross事務局を担当する堀元由梨さんにお話を伺い、ワーキングマザーが抱える課題と、コミュニティが果たす役割について詳しく聞きました。
ワーキングマザーの孤独を解消したい——PeerCross誕生の背景
——PeerCrossを立ち上げたきっかけを教えてください。
もともとは、現在私と一緒にPeerCrossを運営している小西が、社内ベンチャープログラムに起案したことがきっかけです。彼女が第一子の育休から復職する際に、フルタイムでキャリアも前向きに築いていきたいと考えていましたが、上司の方から気を遣って「小西さんは補佐的に働いてくれたらいいよ」という声をかけられ、結果的に実質的なマミートラック(※)に陥ってしまったんです。
こういう時に、同じような価値観や境遇の方に悩みを相談できたらいいのですが、周囲には小西本人からするとバリバリと働く社員しかおらず、また利害関係もあるため、悩みを相談しづらい状況だったのです。小西のこの体験をきっかけに、社内ベンチャープログラムに応募し、PeerCrossが誕生しました。

——PeerCrossの立ち上げに関わる中で、堀元さんご自身も多彩なキャリアを歩まれてきたとうかがいました。これまでのご経歴についても教えてください。
新卒でJR東日本に入社後は、新宿駅のみどりの窓口での勤務や、山手線の車掌を経て、常磐緩行線の運転士として約8年間勤務しました。運転士として働きながら、PeerCrossの事業化に向けた実証実験にも協力していました。2023年7月のPeerCrossのサービススタートのタイミングで社内の公募制度を利用して今の部署に異動しました。小西さんと私は同期で駅での勤務も一緒だったんですが、第一子の育休のタイミングも同じで、一緒に育休中の方向けの勉強会などにも参加しており、そうしたご縁が今の活動につながっています。
「フルキャリ」という新しい選択肢——価値観で繋がる仕組み
——PeerCrossの特徴を教えてください。
私たちが特に大切にしているのは「キャリアの価値観」です。プロフィール登録の際に、キャリアの価値観を五段階で入力していただいています。「バリキャリ」「ゆるキャリ」という言葉を聞いたことがあると思いますが、バリキャリは仕事最優先で、家事育児を外部に全部お任せして仕事に邁進するイメージです。一方、ゆるキャリはご家庭を最優先にして、仕事はほどほどにという考え方です。
そして今、その間に「フルキャリ」という考え方があります。野村総合研究所の武田佳奈さんが提唱されているもので、育児にも前向きであり、かつキャリア形成にも前向きな、どちらも頑張りたいという価値観です。バリキャリからゆるキャリまでの5段階で登録していただき、価値観の近い方同士でマッチングできる仕組みにしています。

——なぜ価値観を重視するのでしょうか?
同じワーキングマザーでも、仕事と家庭どちらかに重きを置いているか、それともどちらも同じくらい頑張りたいかで、考え方や外部に頼る程度、パートナーとの分担状況なども異なってきます。価値観がズレていると、境遇は近かったとしても話が噛み合わないことがあるんです。まずは価値観の近い方とお話しすることで、より良い体験につながると考えています。

「時短を辞めてフルタイムに」——コミュニティが生んだ変化の瞬間
——実際に参加される方は、どのような悩みを抱えているのでしょうか?
仕事も育児もどちらも頑張りたいと思っているがゆえに、いっぱいいっぱいになってしまっていたり、もやもやしている方が多いですね。また、ご自身ではどちらも頑張りたいという価値観を持っているのに、社内のワーキングマザーが時短で働いていると「私もワーキングマザーだから時短で働かなきゃいけない」「子供がいるから出張には行けない」と、自身の思いと裏腹にバイアスや制約を無意識のうちに自身にかけてしまっているケースもあります。
——印象に残っているエピソードを教えてください。
会員の方の中に地方の拠点で働く方で、社内で自分だけがワーキングマザーという方がいらっしゃいました。その方が平日のお昼休みにオンラインの座談会に参加して、「全国の同じ境遇の方から情報を得られて、励みになるのがすごくいい」とおっしゃっていただいたことが印象的でした。
また、周りが時短で復職しており、最大限取得されている方が多いので、自分も最大限時短勤務を続けるつもりだった方が、PeerCrossで「私はフルタイムで働いています」「やりかた次第で可能ですよ」という経験談を聞いて、フルタイムに戻されたケースもあります。実際に悩んでいた方のなんらかのアクションにつながる瞬間を見ると、とても嬉しいですね。

多くの利用者の価値観にふれられる座談会から生まれる“働き方のヒント”
——現在のコミュニティの規模と活動について教えてください。
基本的には1対1のマッチングサービスですが、外部から登壇者を呼んだり、利用者の方企画でお話しできる座談会も月に7〜8回ほど開催しています。座談会は20〜30人、多い時は40〜50人ぐらい集まって、経験談やライフハックをシェアする場になっています。
座談会のテーマも多岐にわたっていて、キャリア系では管理職として活躍されている方をゲストに呼んだり、ライフ系では「小一の壁」や中学受験、ワーケーション、お子様の携帯事情など、本当にさまざまです。
——座談会の中で印象的な経験談はありますか?
例えば、子供のお迎えや学校行事などの予定を事前にスケジューラーに入力し、職場のメンバーと共有することで、突発的な調整を減らす工夫が紹介されたことがありました。こうした具体的な知見に「すぐ実践できる」「参考になった」という声が多く寄せられています。また、「本当はもっと働きたい」と思っていても、周囲の配慮から十分に力を発揮できていないというケースも多くあります。そうした中で、自分の意欲や意思をきちんと伝えることの大切さを語るエピソードもあり、共感を呼んでいます。
他社の管理職の方の事例では、「夜のお付き合いは、必要だと思うものだけ参加するようにし、それ以外は断るようにしました」といった、業務の優先順位付けや権限移譲の工夫の話も出ています。そうした生の声を実際に聞くことで、参加者の方が「これなら私にもできそう」「手放せる部分があるかも」と気づいて、ご自身の働き方を見直すきっかけになっています。
「1on1の霧が一気に開けた」——EVeMとの座談会で見えたマネジメント変革
——EVeMが実施した管理職調査では、全国の管理職・中間管理職約1,200名のうち6割の方が業務増加を感じており、8割の方が改善の見込みがないと回答するという結果が出ました。特に「部下が育たない」「信頼関係の構築が難しい」といった人に関する悩みが深刻でした。
EVeMさん登壇回の座談会では、まさにその調査で浮き彫りになったマネジメント課題に対する実践的な手法を紹介していただき、本当に具体的で実践的な内容だったので、参加者からの反響も大きかったです。
「社内で1on1を実施するように言われていたけれど、何をどう話していいのかわからなかった。この座談会に参加したことで霧が一気に開けた」という声や、「完璧主義を手放して70〜80点の『引き分けを狙う』という考え方が新しかった」「これまで優先順位付けをちゃんとしていなかったので、それで自分で自分の首を絞めていたことに気づけた」といった感想をいただきました。
特に印象的だったのは、昇進によってメンバーを束ねるポジションに就いたもののマネジメントスキルに関する具体的な研修が用意されていないため、メンバーをどのようにマネジメントしていけばいいか、どういう心構えを持てばいいかは、基本的に自分で学んでいく必要があったのでマネ型を知ることができてよかったという声でした。
今回の座談会を受けて「もっと詳しくマネジメントについて学びたい」「マネジメントのあり方を見直すことで、日本企業の未来につながると思う。EVeMを受講したい」という前向きな声もいただいています。

64%が前向き——女性管理職への意外な本音と現実的な課題
——PeerCrossには管理職として活躍されるメンバーの方も多くいらっしゃいます。女性管理職の方が抱える特有の課題について教えてください。
女性比率がまだまだ低い企業が多いので、近くに同じように育児をしながら働く女性管理職がいないという課題があります。そのため、従来型の24時間365日対応するような働き方をしなければならないと思い込んでしまい、悩んでいるケースをよく聞いています。

——一方で、PeerCrossの会員調査では意外な結果が出ているそうですね。
はい、私たちがPeerCrossの会員を対象に実施したアンケート調査では、約7割の方が管理職になることを前向きに捉えているという結果が出ています。一般的に「女性は管理職を望まない」と言われることが多いのですが、実際には全く違う結果でした。
多くの方が課題に感じているのは、管理職そのものではなく、従来的な管理職の働き方なんです。24時間対応や週末のゴルフ、平日の接待といった従来型のモデルしか見えていないから、「自分にはできない」と思ってしまう。でも実際には、本当はリーダーシップを取りたい、責任ある仕事をしたいという気持ちを持った女性は多いんです。
PeerCrossに参加される多くの女性が「自分が育児中の女性管理職としてのロールモデルとなりたい」「自分の働き方を次世代に見せていきたい」というモチベーションを持っていらっしゃいます。
「ロールモデル」から「ロールパーツ」へ——新時代の女性ネットワーク
——PeerCrossのような取り組みが広がって、女性リーダーが増えていけば、社会にどのような影響をもたらすとお考えですか?
育児というライフイベントを経験した女性がリーダーになることで、意思決定に多様な視点が生まれると思います。育児中の女性リーダーが増えることで、ライフイベントを経てもリーダーを目指すことが当たり前になっていけば、男女の賃金格差などもポジティブに変化していくのではないでしょうか。
育児と両立しながら限られた時間のなかで、効率的に働くという新しい管理職のモデルケースが増えることで、男性も含めて多くの人が「こういうリーダーもありなんだ」と思えるようになると思います。
また、こうした多様なロールモデルが増えるためには、早い段階からキャリアに対する前向きな選択肢やサポートを得られる環境づくりも欠かせません。
その一環として、この夏からはライフイベントを迎える前の女性も対象に含めた新サービス「&bloom(アンドブルーム)」の提供を開始しました。ライフイベントを迎える前の段階からライフ・キャリアに関する不安を取り除き、自律的なキャリア形成を後押しすることを目指しています。こうした取り組みを通じて、今後はさらに幅広い女性の活躍を支援していきたいと考えています。

PeerCrossの取り組みは、単なるワーキングマザーの支援を超えて、多様な働き方やリーダーシップのあり方を社会に提示する重要な意味を持っています。「どちらも頑張りたい」という価値観を持つ女性たちが、孤独感を感じることなく、お互いに支え合いながら成長できるコミュニティの存在は、今後の女性活躍推進において欠かせない基盤となるでしょう。
管理職像が多様化し、従来型のマネジメントから脱却が求められる今、PeerCrossのような取り組みと、EVeMが提供するマネジメントトレーニングが連携することで、より多くの女性リーダーが活躍できる社会の実現に向けて、共に歩んでいきたいと思います。
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合同会社DGホールディングス代表 清水 勇人 さん 合同会社DMM.com 組織管理本部 人事部 兼 合同会社EXNOA 人事部長 黒田 賢太 さん -

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「自分の専門性は何?」オイシックス・ラ・大地のサービス責任者が、マネジメントの悩みを強みに変えるまでオイシックス・ラ・大地株式会社
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