『学び続け、変わり続ける組織』になるために ──石川樹脂工業、三代目が実践するマネジメント変革

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石川樹脂工業株式会社
専務取締役
石川 勤さん

「1000回落としても割れない食器」で知られる『ARAS(エイラス)』を製造販売するのが石川県加賀市に本社工場を構える石川樹脂工業株式会社です。かつては売上高の大半を占めていた他社製品をつくる受託製造(OEM)から、ARASをはじめとする自社新ブランドを基軸にしたD2Cへと2016年以降に大きくシフト。事業の伸長とともに、5年間で社員1人あたりの売上も約2倍に伸長するという大幅な飛躍を遂げ「地方製造業の星」といわれています。

ARASはそのデザイン性と機能性の両立により高い顧客支持を集め、現在Instagramのフォロワー数は30万人超と、食器ブランドとして国内でも高い発信力を持つ存在となっています。

事業転換と拡大を牽引してきたのが、三代目である専務取締役 石川勤さんです。石川さんは組織の急成長フェーズに際して、自身が一手に担っていたマネジメント業務の分散と、組織全体の意識・行動変容の必要性から「EVeM マネジメントパートナー」の導入を決めたと言います。

「地方製造業の星」を率いる3代目でもある組織変革の旗手は、どんな未来を見据えて「マネジメントの型」を会社に広めようとしているのか、石川さんに聞きました。

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石川樹脂工業株式会社 専務取締役 石川勤さん

石川勤さん

Profile

石川県加賀市生まれ。東京大学工学部を卒業後、世界最大の一般消費材メーカー『P&G』に入社。日本で数年間の勤務の後、シンガポールに駐在。帰国後、日本のCFO(最高財務責任者)の右腕として従事。2016年、『石川樹脂工業株式会社』入社。

昭和型マネジメントからの脱却、率先垂範した三代目の覚悟

――「EVeMマネジメントパートナー」導入前の課題について教えてください。

石川さん(以下、敬称略):自分が石川樹脂工業に戻ってきたばかりの頃(編注:2016年)、従来のOEMを主軸とした事業構造から、D2Cに軸足を移す決断をした際に、マネージャー層が大量に離職したんです。そこで一旦、自分が全てのマネジメント業務を引き受けたのですが、新しく立ち上げた「ARAS」が大きくなるに従って、一人では抱えきれなくなりました。

そこで、社内でマネージャーを育てる必要性が出てきました。しかし、自分自身もこれまでの経歴の中でマネジメントの研修を受けてきたものの、他人に教えられる程に詳しくはありませんでした。悩んでいた時に参加したICCサミット(ベンチャー・スタートアップが集うカンファレンス)で、EVeMの「マネジメントの型」について知りました。

――なぜ、数あるサービスの中でEVeMマネジメントパートナーに決められたのでしょうか。

石川:(EVeM CEOの)長村禎庸さんのスタイルや「マネジメントを民主化する」という世界観に共感しましたし、マネジメントの型という体系化されたスキルの集合であることで、再現性を確保しているように感じられました。前職の外資系企業では、マネジメントをスキルとして捉え、学ぶ事で身に付けられるものであるという考え方をしていたので、そことの親和性があったことも大きな理由でした。

 ――最初にマネジメントパートナーを受講したメンバーの選定理由は。 

石川:第一弾として、私と、ARASのデザインを一緒に創っているデザイン事務所の代表、新しく採用したマーケティングを担う執行役員、そして人事責任者の4名が、EVeMマネジメントパートナーを受講しました。執行役員は私と前職が同じ会社だったので「マネジメントの型」を違和感なく受け入れられるとは思っていました。

人事責任者については、これまでマネジメント経験がなかったので、彼が適応できるかどうかで、全社レベルでの導入を決めようと思っていました。

――結果は?

石川:ばっちり笑 もともとマネジメントに興味をもっていたということもあり、とても意欲的に取り組んでいました。それもあって、第二弾の実施(編注:2026年5月から製造現場のマネージャーも受講)を決めました。
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熟練工の手により施される仕上げ工程

――第二弾として、より現場に近いマネージャーの方々を受講者として選ばれましたね。  

石川:今回は本当に『勝負』だな、と思っています。第二弾としてEVeM マネジメントトレーナーを受講してもらっている人たちは、本人もマネジメントについて体系的に学んだことがなく、かつ、現場で『昭和型マネジメント』で叩きあげられてきているからです。彼らがどう変わっていくのかが楽しみですし、私も、彼らにしっかり伴走したいと思っています。

――社内に展開するにあたって、意識された事はありましたか? 

石川:自分と人事責任者でしっかりと説明することでした。「これ受けといて」と投げっぱなしにするのではなく、掛けている期待と、受ける意義について私自身と人事責任者の2人で懇々と。何せ2名ともEVeMのトレーニングを受けているわけですから、説得力は抜群です。1Dayキックオフ(EVeMマネジメントパートナーの開始時に、担当トレーナーが1日掛けて基礎を説明するプログラム)の際にも、私がお昼休みに会議室に入って直接声を掛け、受講者のモチベーションを上げていきました。 

自分を引き締める「心得の型」 

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美しい山並みに囲まれた本社工場。現在、ARAS専用の第二工場の建設が進んでいる

――EVeMマネジメントパートナーを受けて、石川さん自身にはどのような変化がありましたか?

石川:元々自分がマネジメントスキルの研修を受けていたこともあり、『動作の型』については、目新しさというより、自分の中で再確認できたという認識でいます。一方、とても学びになったのは『心得の型』です。Empower Session(EVeMトレーナーによる1on1セッション)の中でも、心得に時間を多く割いてもらっていました。

特に、心得の型1の「平時と有事を見極め行動する」や、型16の「メンバーの人生に大きな影響がある自覚ということを心得る」は、自分自身マネジメントをやっていく中で、折に触れて見返し、自分を引き締めています。

――組織においてはどのような変化がありましたか? 

石川:改めて組織全体のマネジメントにおける「引き出しの少なさ」が浮き彫りになったと思っています。皆さん、それぞれの人生経験から生まれる一定の型のようなものは持っているのですが、それでも2〜3個しかない。少ない型で全ての問題に対処しようとするから、様々な問題が起きてしまいます。

料理人だって、扱う素材によって包丁を変えることで、それぞれの素材の持つ魅力を引き出している訳じゃないですか。魚と野菜を同じ包丁で切ったら、美味しい料理は出来ないですよ。

――全社のマネージャーの「引き出し」を増やす方向性が見えてきたわけですね。 

石川:そうですね。特に「権限移譲」の型は、一刻も早く全社に導入したいひとつです。製造業は特に、オペレーションを運用する際に、適切に権限移譲しないと組織の運営がうまくいかないと思っています。 

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しかし、実際の現場では、業務を丸投げしてしまったり、逆にマネージャーが現場につきっきりで若手が育たなかったりと、改善点が多いのが現状です。この問題を解消できれば、組織全体のアウトプットはまだまだ伸ばせると確信しています。

会社の未来を繋ぐのは「学び続け、変わり続ける」経営者

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「ものづくりや売り方と同じように、マネジメントの方法も新しい時代に合わせた形に再翻訳したい」と語る石川さん。

――これから先、石川樹脂工業の未来をどう思い描いていますか?

石川:ものづくりを新しい時代に再翻訳したいと思っています。私たちは伝統工芸品「山中漆器」を扱う会社からスタートしましたが、主力製品をARASという樹脂製品、現代に合った形に再翻訳しています。売り方も、これまでのOEMや卸売から、ECサイトや直販を通じたD2Cに転換し、直接お客様とやりとりする方法に再翻訳しています。

マネジメントも同様に、これまでの「昭和的頑張れトップダウンマネジメント」から、全員がマネジメントスキルを身に着けた組織運営に変えていきたい。

 そうなれた時に、ARASは『D2Cで伸びているブランド』から、誰もが知っている定番『ナショナルブランド』を目指せるようになると考えています。 

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 高級感と堅牢性の両立が、ARASが支持を集める理由のひとつ

――これからの石川樹脂工業を、どんな組織にしていきたいですか? 

石川:石川樹脂工業は「学び続け、変わり続ける組織」でありたいなと思っています。『失われた30年』の間、日本企業は変わることを止めていました。特に地方では、最後に大規模な設備投資を行ったのが20〜30年前という会社も当たり前のようにあります。いまだにFAXが現役だったり、フロッピーディスクを業務で使っている会社も多いです。

これは、経営者自身が学び、変わろうとしなかったことの表れだと考えています。バブル期まではそれで良かったと思うのですが、現代になって、その停滞のツケがとうとう回ってきたのが、今の地方企業の実情です。 

 ――これからの組織においてEVeMに期待されることは。

石川:私の考える理想のマネージャー像は、『学び続け、変わり続けられる人』です。そういうマネージャーを育てるためには、経営者自身もそうでなくてはなりません。

 EVeMマネジメントパートナーを導入する際にも、まず私がトレーニングから学び、率先して業務に活用したからこそ説得力が産まれ、第二弾の受講者の皆さんも前向きに受講してくれているのだと思います。 

EVeMには、全マネージャーに、マネジメントに関する知的好奇心を刺激し、「学び続け、変わり続ける」という習慣をつける支援を進めてほしいですね。 

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石川さんと担当トレーナーのEVeM 山田 修平